シネマトーク ( 映画レビュー )

ワンダー 君は太陽@TOHOシネマズ上大岡

ニューヨークに住む10歳のオギーは先天性の遺伝子異常で顔に「見た目の障害」があり、これまでは学校に通わず自宅で勉強していた。しかし「普通に育ってほしい」という母親の強い要望で地元の小学校に入学するが、周囲からは「ペスト菌」のように

扱われ、つらい毎日を過ごす。だが徐々に周囲もオギーに慣れてきて、友達が出来始める…

あらすじを読むと「見た目に障害を持つ男の子が偏見やいじめに耐えながら健気に生きていく涙と感動のストーリー」だと思いますよね?私もそう思って見始めたのですが、それは物語のごく一部で、もっと大きな、人として大切なものは何か?について考えさせられる作品でした。オギーの友達、オギーの姉、オギーの姉の友だち…みんなそれぞれに悩みを持ちそれと折り合いながら成長していく。オギーが主人公で物語が進んでいくんだろうなと思って観ていると…あらら!という意外な驚きがあって新鮮でした。

ただ、映画としては「ほら、感動してね!」という姿勢が見え見え過ぎてしまって、ちょっとなぁ。筋の展開が甘すぎるように思えた部分もあったのが残念でした。これは私がひねくれた感性の人間だからでしょう。普通に見れば、何度も泣かされること間違いなしの、胸を打つ映画なのは確かです。

「正しいことと、親切なこと。どちらか迷ったときは『親切なこと』を選びましょう」(オギーが通っていた学校の先生の言葉)

満足度☆☆☆

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七人の侍/TOHOシネマズ上大岡

戦国時代。野武士による野盗に何度も襲われ被害を受けていた村人たちは、村の古老に相談し「飯を腹いっぱい食わせる」という条件で、仕事にあぶれた侍を雇って自衛すことを決めた。やがて七人の侍が集まり、村人たちと力を合わせて野盗を撃退する。(1954年、日本)

ちょっと前に書いたように、私はいままで恥ずかしながら、黒澤明監督の作品を観たことがありませんでした。これはマズいなぁと最近思っていたらこの映画がリバイバル上映されたので、観ることが出来ました。なるほど、傑作と言われているのが理解できます。筋書きが面白いしリアリティがあって。ただ、危惧していたことなのですが、やはりセリフが聞き取りにくい場面がたくさんありました。調べてみると公開当時にも、特に「三船敏郎が何を言ってるのか分からない」という人が多かったそうです。彼が仲間の侍たちに農民の本質を思い知らせる場面(お前ら、百姓を仏様か何かと思っていたのか!)なんかは名場面だと思うのですが、一部分しか聞き取れずに残念でした。でも「この飯、おろそかには食わんぞ」とか「本当に勝ったのはあの百姓たちだ」という、日本映画史上に残る名セリフはしっかり理解できて、嬉しかったです。

黒澤映画に関しては、あとは『羅生門』『生きる』あたりを観てみたいですね。さらに日本映画のマスターピースとしては、男はつらいよシリーズ、ジブリ作品、北野たけし作品なんかも観ておかなきゃと思っています。他に観ておいたほうがいい傑作があれば(たくさんありますよね)、ご推薦をお願いします。

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グッバイ・ゴダール!@ジャック&ベティ

1968年のパリ。20歳のアンヌは、新進気鋭の映画監督として注目を集めていたジャン・リュック・ゴダールの恋人となり、彼の作品に主演する。5月革命でフランス全土が揺れる中、ゴダールとアンヌは刺激的な日々を送るが、やがて二人の間に亀裂が入り始める…(2017年・フランス映画)

ゴダールの実際の奥さんだったアンヌ・ヴィアゼムスキーの回想録を元にした作品。ヌーヴェルヴァーグの象徴ともいえる『勝手にしやがれ』という新感覚の映画で一躍「時の人」に祭り上げられたゴダールだったが、実際には痛烈な皮肉屋で、平気で人を傷つけ、しかも果てしなく嫉妬深いという面倒くさい人物だった…(でもそんな彼を愛していた)という映画ですね。

1960年代後半といえば、ベトナム戦争の是非をめぐって学生運動が各地で勃発し、アメリカではニクソンが、フランスではドゴールが失脚した激動の時代。私は小学校の5〜6年ぐらいだったのでその頃の空気感はほとんど体験していないのですが、「なるほど、こういう時代だったのか」というイメージは持つことが出来ました。「革命」とか「解放」なんていう言葉を、多くの(一部の?)若者たちが本気で信じていた、幸せな時代・・・(あ、そういえばこの時代の寵児だったボブ・ディランをフジで観たばっかりじゃん!)

で、筋とはぜんぜん関係ないんですが、私はゴダール役の俳優さんがジョン・レノンに似てるように見えてしまって(特に鼻と眼鏡!)、そういえばジョンも素直でない皮肉屋だったし、人と違うことをするのが大好きだったし、ゴダールと共通してる所があるかも?と思いながら観ていました。苦くて甘い…ではなく、苦くて苦い映画ですが、最後の最後はかすかな微笑で終わるので、少し救いがあって良かった。

「35歳を過ぎた芸術家なんて、マヌケだ」(当時37歳だったゴダールの言葉)

満足度☆☆☆+☆半分

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アイ・アム・ザ・ブルース@シネマリン

ルイジアナミシシッピーなどアメリカ南部で活躍するブルース・ミュージシャンを追いながら、ブルースと言う音楽の魅力と精神、繁栄と衰退、未来への希望を描いたドキュメンタリー(2015年・アメリカ/カナダ合作)

登場するミュージシャンは若くても70代。この映画の撮影後に亡くなった人も一人や二人ではない。こうしてみると、ブルースという音楽は「年寄りの黒人のもの」ということになってしまうのでしょうか? うーん。それが現実(の一部)かもしれませんね。でも、人種差別が合法だった頃からブルースを歌い、演奏してきたミュージシャンたちが今でもステージに立ち、老人ホームのパーティーで歌ったり、時には家の裏庭で、バーの店先で気ままに演奏する姿を観ていると、ずっしりと重いものがブルースには込められているんだなと感じました。また、今から50年以上も前に、こういう音楽を録音したレコードがイギリスに渡り、それを聴いたエリック・クラプトンジミー・ペイジブライアン・ジョーンズキース・リチャーズミック・ジャガーなんかが夢中になっていったんだなぁと思うと、感慨がありますね。

「いい時というのは、長く続かない。でも悪い時も、長くは続かないんだ。人生って、そういうもんさ」

満足度☆☆+☆半分